調律気まぐれ日記 vol.17

                ~伝言ゲーム~

ある日

神社での調律にお伺いしました。

その神社はお庭が有名で、観光バスで訪れた団体がガイドさんの旗につづいて

てくてくと遊歩道を歩いてお庭を散策されます。

ちょうど私が調律をしている部屋の横をぞろぞろと歩いて通るのです。

ピアノと遊歩道は格子戸で仕切られていて、晴天だったその日は、外が明るく

格子戸の外からは中の私もピアノも見えない状態で、でも、内側の私からは

団体がすべて見え、会話も聞こえていました。

 

ちょうど、最高音に近い辺りの調律をしている時に、歳は60~70歳くらいの

20名ほどの団体が、ガイドさんの旗につづいて格子戸の前を通りました。

ピアノの最高音に近い音は連打すると金属のように「キンキン」とか「カンカン」と

聞こえるので、先頭から3人目の女性が、そのの高音を連打する音を聞いて
 

「これ、鐘を叩いて何かの儀式をしてるわ」と、後ろの女性に言いました

後ろの女性も

「そうなの、何かの儀式をしてるんだって」と、後ろの女性に・・・

次の女性は

「鐘を叩いて、お祓いしているんだって」と。

その後は、後ろの人に次々に

「お祓いをしているんだって・・・」と、伝言ゲームの様に後ろの人に伝わっていきました。


最後の女性まで来た時、ゲームならここで勝負です。
 

最後の女性は「あっ、調律してるね」って言いました。


私は「正解」と、格子戸の内側から言いました。

 

 

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