調律気まぐれ日記 vol.15

 

~大工さんの耳は調律向き~

 

ある日
いつもの様に調律にお伺いしたときの事です。
お客様の家に着いてびっくりしました。
四人の大工さんがトンカン、トンカン作業中なのです。
 
あれ、大丈夫かなぁー
心配しながら、チャイムを押すと、奥さんがでて来られました。
私  「今日は調律にお伺いしてよかったのですか?」
奥さん「大丈夫、大工さんには頼んであるので、調律中は音が出ない様に
    してもらいますから、どうぞ入ってください。」
 
よかった。
では、お邪魔します。
 
大工さんは、玄関を入ったすぐの部屋を改築中で、作業に夢中でした。
私は、その中を通り、隣の部屋にあるピアノに向かいました。

約束の通り、調律の作業中はとても静かで、スムーズに作業を終える事ができました。
そのあと、お茶をいただきながら、奥さまとお話をして、そろそろ、帰る時のことです。
 
私が、お茶菓子を食べていなかったので、奥さんが、「今つつむので、持って帰ってね」と、
つつむ紙を探されだしたので
私は、「失礼ですが、ポッケに要れますので、このままで結構です。」と、言うと

奥さん 「ごめんね、このままでいい? はだかでごめんね。」 

私   「いえいえ、こちらこそ、そのまま持って帰って失礼します。」

奥さん 「いいの?ほんとに、はだかでごめんネ、はだかでごめんネ・・・
         悪いねぇー、はだかで・・・」

なんか変だ。
そう思いながら、私がドアを開けた時です。
玄関に居た、四人の大工さんが集まって、全員こちらを凝視していました。

手を止めて、目をまるまるとさせて・・・

そりゃそうですね。
ドア一枚、隣の部屋から「裸でごめんね。裸でごめんね。」と、奥様の声が何度も聞こえて
来るのですから、誰でも、見たくなりますよね。
 
しかし、大工仕事をしながら、隣の声を聞き取れるのは、とても、良い耳です。
 


 

1