調律きまぐれ日記 vol.8
駐車禁止に犬のおまわりさん

ある日。
いつものように調律におうかがいしたときのことです。
いつものように、お家の前に車を止めて降りると、とても大きな犬が
吠えているのです。
「わっ、犬を飼われたんだなぁーーー」と、見ていると、奥様が
でてこられました。
奥様 「調律ご苦労さんです、犬はお嫌いですか?」
私  「いいえ、大好きです。大きい犬ですね・・・」
奥様 「子供が飼うっていうものだから、飼ったけど、すぐに大きく
    なっちゃって、大変なんですよ。子供も世話をしないし・・・」
そう言っている間も、ずっと吠え続けていました。
奥様 「どうぞ入ってください。そのうち鳴きやみますから。」
お家に入って、ピアノの前にきても、まだ吠えていました。
調律の作業を始めても、しばらくワンワンと聞こえていました。
10分くらい経った頃でしょうか、ようやく鳴き声もおさまり、
静かに作業が進められるようになりました。
奥様 「ごめんなさいね、うるさかったでしょ、いつもはもっと早くに
    おとなしくなるのに・・・おかしいね。」
私  「私が怪しかったのかなぁ。それにしてもあれだけ吠えて、喉が
    いたくならないんですかねぇ・・・」
などと、冗談を言ってまた作業をすすめました。

ようやく作業もおわり、奥様といろいろとお話をさせていただいたのですが
来たときとはうってかわって、外がやけに静かなのです。
私  「もう、吠えないですね、やっぱり、疲れたんですよね・・・」
そんなことをいいながら、帰ることになったのですが、玄関を出て
犬を見てみると、全く吠えもせず、車の横で静かに伏せていました。

様子が変です。
はじめの元気がないのです。
犬の周りには黒い物が散乱していて何か事件があった感じなのです。
散らばった黒い物、それは、プラスチックの様な、ゴムの様な・・・

いったい何?
手にとって見たときです、かけらの一つを見ておどろきました。
手に取った黒い破片には、英語で「NISSAN」の文字があるのです。
もしや、あわてて車を見ると・・・
「ショック」
私の車の左後輪の泥除けがないじゃないですか。
そう、横で元気のない犬のしわざなのです。
噛みすぎて疲れたのか、怒られるのが恐いのか、元気のない原因は
これだったのです。
奥様は、私にごめんなさいと何度もおっしゃって、ずっと謝っておられ
ましたが、車を止めた私が悪いんです。
犬は、それが嫌で、声がかれるほど訴えていたのに、わかってあげられず
に悪いことをしました。
犬にとって駐車禁止の場所に止められた車には、きっちり罰を与えたに
すぎませんでした。
「犬のお巡りさん、ごめんなさい、許してください。」
と、言っても、泥除けは戻ってこないものなぁーーー

泥除けに犬よけつけるか・・・

 

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